おいらは船長である。
今日も、船は波を蹴散らして、東京湾を疾走する。
本日の狙いは、真鯛である。
デカイの一匹釣って、今晩のおかずにするのだ!
っと、意気込んだものの、鯛どころか、な~んも釣れやしない。
相変わらず、どでかいタンカーだの、コンテナ船だの、
イージス艦だの、潜水艦だのが、傍らを通り過ぎる。
「よし、いっそ岸近くを釣ってみるか?」
船を岸から、100mほどに寄せる。
すると!
うわあ~爆釣だあ~!
8本の釣り針を付けた釣り糸に、8匹の魚が釣れている!
その魚とは・・?
<
かたくちイワシ>
体長10センチほどの、イワシだ。
カツオの一本釣り、ってのテレビで見たことあるかな?
あの釣りで、ばら撒かれている小さな魚が、
かたくちイワシだ。
(
かたくちの字がよく解らない)
堅口なのか、片口なのか・・とりあえず、
<堅口>に肩入れして、話を進めよう。
さ~てと、その堅口イワシ、まことに良く釣れる。
釣り針の分だけ、釣れてくる。
釣り針には、疑似餌が付いているだけなのだが、
よっぽど腹が減っているらしい。
釣り上げると、鯉のぼり状態の鈴なりである。
ものの10数分で、何十匹が釣れあがる。
釣れた釣れたと喜び勇んで、おうちに帰り、
刺身、なめろう、テンプラを拵えた。
いただきまあ~す!
食べた・・
《うん、旨かったヨ・・》
その時、私は気付いたのだ。
堅口イワシくん達は、あのカツオくんの
大の御馳走なんだわナ。
カツオくんは、堅口くんを食した時、
あまりの旨さに、
打ち震える感動をしている筈なんだナ。
毎日食べても、
まだ食べたいパニックを起こすほどの
感動的な旨さなんだナ。
だのに、私の感想は、
《旨かったヨ・・》
カツオくんの御馳走をハネた私である。
たとえチョビットでも、御こぼれに預かった私である。
ならば、もっと感動しなければいけないよネ。
旨かったヨ・・程度で、お茶を濁してはいけないネ。
ここは、ひとつカツオくんに挨拶しとかなきゃ。
『ごめんネ、カツオくん』
ならば、堅口くんにも、挨拶しよう。
『今日は、40匹の堅口くん、どうもありがとう!』
(ふむ・・
40匹食ったんだナ・・)