イシマルの父親が、アッチに逝っちゃったのだが、
その逝く当日を知りたいと云う方の為に、お話を・・
「聞きたくねえわい・・」
という方もそう云わずに、ちょいとお付き合いを・・
だってネ、 ケツが綺麗なのって、喜ばれるヨ。
その日、93歳の父親正也(まさや)は、
突然具合が悪くなったのだ。
あろうことか、
行きつけの病院に、自分で電話をしたのだ。
「これから入院します、よろしく」
よろしく・・と云われた側も困ってしまうが、
正也は、果敢に病院に向かった。
ここで、まず疑問が湧く。
入院するほど重症ならば、自分で電話するだろうか?
ガチャリと電話を切るなり、徒歩で向かった。
正也の家から、病院まで、 300mの上り坂が続く。
勾配がきつい。
今から、入院しようと云うのだから、通常であれば、
タクシーを呼ぶだろう。
もしくは、病院の送迎車を待つだろう。
もしくは、救急車が駆けつけるだろう。
正也は、違った。
自らの足で歩いて行く。
入院ですら、自らの足で歩いて行く。
そういう信念を持った人だった。
こんな事で驚いてはいけない。
その正也の 左手には、
数日分の下着が入った袋がぶら下がっている。
右手には、
洗面器が抱えられている。
その洗面器の中には、
歯ブラシ、髭剃り、MG5.タオルなど・・
生活用品一式。
コレを両手に抱えて、
急斜面の坂道をズンズン登って行ったのである。
そして、病院に着くや、バタリと倒れ、
12時間後に、サヨナラしたのである。
去り際の潔さ、綺麗さの真骨頂である。
さっき、洗面器の中を云う折に、何気なく、
<MG5>(エムジーファイブ)と云ったが、
それは、 整髪料である。
そもそも、ここがおかしい。
これから、入院しようと云う人が、
整髪料を持参するだろうか?
髪がフサフサしているワケでもない93歳である。
多少の毛が残っている93歳である。
これからモテル心配をしなくてよい93歳である。
正也は、両手にこれから入院生活の必需品を携え、
決死の覚悟で、坂道を登ったのである。
そして息絶えた。
この事実を考み、
私は、生涯をとして考えたい。
洗面器の中に入っていた、
《 整髪料MG5》の意味を・・
by ishimaru_ken
| 2009-06-05 08:22
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