函館朝市に、私が歩いている。
目的はただ一つ、あるものを食べたいからだ。
<ハラス定食>
ハラスとは何ぞや?
それは、鮭のお腹の部分である。
魚を捌いた経験のある方には説明しやすい、
腹の最も脂ののった部分である。
マグロで云えば、大トロなのだ。
そのハラスに軽く塩をして、天日干しにしてある。
大きさは、20cm×3cm
「ハラス定食ください」
注文してから、待つこと15分。
カリっと焼けた2本のハラスが、
香ばしい匂いと共に運ばれてくる。
やおら、
黄金色に輝くその身に、割り箸をグサリと差し込む。
パシュゥ~
表面が破れ、脂にまみれた空気がとび出してくる。
プルプル震える身を摘み、ご飯の上にのっける。
すると、どうだ!
真っ白いご飯が、鮭色に鮮やかに染まっていくではないか!
この色は、生卵かけご飯に似ている。
もう、頭の中が真っ白になり、箸が折れんばかりに、
かきこんでゆく。
ガツガツガツッ
肉塊としては、少量に過ぎないハラスの一部が、
口中を火事現場たらしめ、
鼻腔から、噴火せしめ、
身体全体に染み渡ってゆく。
完全に自分を見失っている瞬間だ。
さあ、ハラス定食を食べたくなったアナタに進言です。
ハラス定食は、<舌きりすずめ>の寓話に学びましょう。
店の前にあるサンプル写真を見ると、
手のひらに乗らない程の
大きなハラスがあったり・・
かなりしょぼ~い
小さなハラスがあったり・・
さっ、すずめのお宿から帰るお爺さんは、
どちらを選んだか覚えてますよね。
えっ、それでも大きいのが食べたいって?
どうぞどうぞ、わたしゃ強制はしませんですけん。