日光に行くってぇと、
<
いろは坂>ってぇのがありやしてな。
曲がりくねった登り坂の代名詞みてえになってるんですな。
日本中にある、<七曲がり>だの<つづら折れ>だのの、
くねくね坂道の総本家的な存在と云っていいんでないかいね。
そのいろは坂を車で、ドライブってぇ洒落てみるとだね、
面白れぇ看板が、現れるんだわな。
<い>から始まる
いろはを、
何十メートル毎に立ててあるんだよ。
<ほ>を見つけてある一定の距離を走ると、
<へ>が出てくるってぇ仕掛けだ。
ん・・?
っとここまで書いて、今気づいた。
距離で立ててあるのではないな。
カーブ毎に立ててあるのだわいな
そんでやね、この一見親切に見える看板なんだがね、
面白そうに見える看板なんだがね。
ちょいと困るんだな。
自動車ならいいんだけどね。
なんとこの坂道を、
自転車で登っているツワモノがおるんだわさ。
ご年齢も、私より遥かに上のおっちゃんなんだわさ。
そのおっちゃんの気持ちになってみなよ。
キイキイ必死でコイデ、やっとカーブまで来たら、
<ぬ>が<る>になるのである。
こんなに、汗水流しているのに、まだ<る>なのだ。
先はまだ、<和歌よたれそ~>と遥か遠いのだ。
人は、
現実より、想像力がたくましい動物である。
一つづつの進みをいちいち確認されると、
非常に疲れる。
忘れさせて呉れた方がよっぽど有りがたい。
苦労している最中は、
自分の立ち位置を知らない方が楽なのだ。
ほんでもよ、<
ん>を発見した時は、
涙が流れるほど嬉しいだろうな。