ご近所に、<高木のおやっさん>という知人がいる。
知人であり、友人であり、先輩であり、恩師でもある。
御年75才の、面倒見の良い、おやっさんだ。
そのおやっさんが、
今年最初の<ワカメ>を漁師に分けて貰った。
沢山貰ったので、気前よく皆に振る舞った。
「ワカメ、持ってけ!」
我が家にも、振る舞って貰った。
「持ってけ!」
そして、その夜、ワカメ好きのおやっさんは、
楽しみにしていたのだ。
《
ワカメシャブ》
新物のワカメをシャブシャブにすると、春の香りがして、
すこぶる旨い。
真冬の恒例の風物詩として、こよなく愛していた。
「おお~い、ワカメを食べよう!」
おやっさんが呼びかけると、台所で奥方がつぶやく。
『あら、無いわヨ』
「え~なんで?」
『だって、あなたが、持ってけ持ってけって、
みんなに、全部あげちゃったじゃない』
「
ふんげっ・・」
気前がよく、面倒見の良いおやっさんは、
自分の分を忘れていたのである。
うん、おやっさん、美味しかったよ、ワカメシャブ。
来年、又振る舞ってネ。
コレが
こうなる