「サメの刺身です、どうぞ」
ひえ~どうぞと言われて、困ってしまった。
サメの肉は臭いと云うのが、昔からの定説である。
実際、サメは臭い。
魚市場に転がっているサメに近づくと、すぐ解る。
独特の臭いがする。
フカヒレを干してある場所に行くと、
アンモニア臭でノドがひくひくする。
「さあ、どうぞ」
勧めてくれているのは、深海ザメを捕獲している漁師だ。
恐る恐る覗き込む。
真っ白な刺身である。
太刀魚の身に似ている。
箸でつまむ。
鼻に近づける。
ふむ、何も臭いがしないナ。
口に放りこむ。
ふむふむ、脂がのって旨みがあるぞ。
しつこくない脂だナ。
「深海のサメは、臭わねえんだヨ」
『いい奴なんですね』
「ほんで、この肝の油が、
肝油だわな」
『え~あの<
深海ザメエキス>ってヤツなの?』
「おうよ、万能薬よ!」
『なんでも効くんだ!』
「大戦時には、
ゼロ戦の潤滑油に使われてたんだゾ」
『うっそ』
「上空、5000mでも凍らないってんでナ」
『深海、冷たいから・・』
「飲むかい?」
『飲む飲む!』
ゴクンっ
「どうだ?」
『おお~効いたあ~!』
「バカたれ、簡単に効くかい」
『効いたフリしたら、お土産に頂けるかと思って』
「フリしなくても、やるよ。持ってきな」
頂いた肝油を、自分でカプセルに詰め、
どこも悪くないのに、飲み始めた私であった。
なんか効能が出たら、発表します。