私は、40才近くになってから、ハイエースに乗り始めた。
ところが、俳優でハイエースに乗っている奴は、殆どいない。
そのせいか、
ハイエースの駐車方法を学んでいない。
そのせいか、こんなハプニングが起きた。
15年程前のある日、
新宿の地下駐車場に、我がハイエースが入った。
同乗しているのは、
中国遊戯を研究しようと集まった(私を入れて)4人の仲間だ。
(中国遊戯に関しては、気にしないで下さい)
地下駐車場の制限高さは、2m10と書いてあった。
我がハイエースも、2m10である。
入場する時、まさに
ギリギリのクリアであった。
スレスレと云ってもいい、通過であった。
走り高跳びの、イシンバエワびっくりの
キリキリであった。
取りあえず、車が入った私達は、中国遊戯に向かった。
(気にするなって)
しかして、時が過ぎる事、数時間・・
気にしない中国遊戯を終え、肩をすぼめ、仲間3人は、
三々五々、新宿の街に散っていった。
一方、
一人になった私は、地下駐車場に向かう。
ブルルル~
料金を払うべく、出口に向かう。
そこで、大問題が勃発した。
《
出口の天井に、ハイエースの天井がツカエテいる!》
ツカエテいる高低差は、1㎝だ。
たった、その1㎝で、ハイエースは脱出出来ない。
なぜ?
答えは簡単だった。
入場時に乗っていた
3人分の体重200㎏が、失われたのだ。
必然、ハイエースは浮き上がる。
1㎝!
何とかしなければ!
私は、必死になった。
夜中の3時だ。
街を歩く人達に声を掛けた。
「あのぉ~ハイエースに乗って貰えませんかぁ?」
3人乗せれば、元の高さになると考えたのだ。
ところが!
その出口の場所が問題だった。
新宿の歌舞伎町のど真ん中に、その出口はあった。
声を掛けた人達は、完璧な酔っ払いである。
『なんやと!拉致すんのか!』
『キャー誰か助けてえ~!』
警察を呼ばれてもおかしくない勧誘である。
誰がどう考えても、乗って呉れる筈がない。
そこに現れた救世主、メタボ系の男性3人。
『どしたの?』
「かくかく、シカジカ」
『ほな、乗ったろかあ~』
かくして、我がハイエースは、危機から脱出したのである。
メタボ酔っ払いバンザイ!
この話を聞いた友人が私に、チッチと、ヒトサシ指を振る。
「バッカじゃないの、
タイヤの空気を、
ちょいと抜いて走ればいいんだよ!」