将棋の対戦には、
<駒落ち>(こまおち)なるものがある。
二人の実力に差があるとき、
ハンディを付けようと言うのだ。
ゴルフでは、最初から○打貰うというハンディだが、
将棋では、駒を落とす。
強い方が、その差を計算して、
駒を盤上から、無くすのである。
例えば。最初から、<飛車(ひしゃ)>が無い。
飛車と言えば、
王より大切にする将棋指しがいる程の強い駒である。
それが、無くなる。
その上で、戦おうと云うのだから、実力差やいかに・・
さらに、実力差がある時には、飛車と共に、
角(かく)も落とす。
「飛車角落ち」なんて言葉があるよね。
あの用語は、ココから来ている。
同い年の友人が、将棋をやろうと言い出して、
「飛車角落ち」で指されると、がっくりする。
そんなに実力差があったのかと、首をうなだれる。
確かに目の前のナカヒラ君は、肩を落としている。
いるが、
悔しさをバネにして、戦いを挑んでいる。
でいるにも拘わらず、
私が勝ってしまう。
飛車角の無い私が勝ってしまう。
「う~ん、どうもおかしい・・」
私が
手品を使っていると、いぶかっているフシがある。
「もういっちょやろう!」
もういっちょやる。
私が勝つ。
ナカヒラ君の腕組みが深くなる。
「じぇったい、おかしい!」
私が
インチキしていると、確信しているフシがある。
「もういっちょやろう」
夜は更けてゆく・・・
椅子ふたつの列車 三陸鉄道にて