古いガスレンジ
ガスレンジを新調したのだ。
それが、どうした・・と言われそうだが、
我が家にとっては、画期的な事なのだ。
10年間使用してきたガスレンジであるが、
数年前に、二つある方の片方のバーナーが壊れてしまった。
それと前後して、チッチッチッで火が点く、
自動点火装置も壊れてしまった。
それ以来、ガス台の横には、いつも
チャッカマンが置かれてある。
キャンプの時に仕様するアイツだ。
カチャッ!
チャッカマンに火を点け、ガス台に近づける。
ボッ!
やや危ない瞬間である。
もっと危ないのは、魚焼き器だ。
あの中に、チャッカマンを差し入れ、火を点けようとするのだが、
うまく点火してくれない。
そのうち、ガスが充満して、あげくに
ボカンッ!
小さな爆発をおこす。
最近は慣れてきたものの、5回に1回は、ボカンッ!
いつか、前髪が焦げるのではないかと、危惧している。
「危惧するぐらいなら、買い換えればいいじゃないですか」
そう、その通りなのだ。
なのだけんどもネ、
人は、《
便利な事に慣れる》性分を持っている動物だが、
《
不便な事にあこがれる》性分も、
持ち合わせているらしいのだヨ。
「ああ、お湯が、ひとつしか沸かせない・・」
「両手を使わなければ、火が点かない・・」
「ううぅ・・」
その苦労の日々が、本日終わった。
真新しいガスレンジが、チッチッチッと音を立てている。
面白いものだから、何度も、チッチッチッを繰り返している。
魚を入れてもいないのに、焼き所を暖めたりしている。
そして今、用済みとなったチャッカマンが、
油に汚れた姿で、淋しそうに、転がっている。
っと思ったら、
コンロの下から、幾つも歴代のチャッカマンが現れてきた。
「よしよし、そんなにうなだれるなヨ。しばらく休みなヨ。
じきに又、キミの出番がやってくるサ。
じきにネ」
歴代のチャッカマン達