生まぐろ回遊
<水族館好き>である。
散歩をしていて水族館が現れると、間違いなく入る。
入るのだが、私の目的は決まっている。
ヒンシュクを買うのを承知で申せば、
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食べられる魚>を見ていたい。
う~む、正しく申そう。
<
食べてもいい魚>をじっと見ていたい。
う~む、もっと正しく申そう。
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食べた事のある魚>を目で追いかけたい。
イワシが、口を大きくパクパク開けて泳いでいる水槽の、
ガラスに張り付いて、私は口をパクパクしている。
カツオの群れが泳ぎくる先に待ち伏せ、
見えないモリを、そっと投げている。
でっかいマグロが回遊するのを眺めながら、
トロである腹の部分の膨らみを品評している。
「奴あ、運動不足やな、脂に締まりがないデ」
許されるものならば、魚河岸で仲買人が被っている、
ヒサシの上に数字の付いた
アノ帽子をかぶって行ってみたい。
ガラス越しに魚を眺めながら、指でセリの暗号を送ってみたい。
「極上のブリが通過したナ」(1万8000円)
「滅多に見られない鯖の魚体だな」(9000円)
「あのイサキがいい!」
『えっどの?』
「今、反転した奴!」(1500円)
『この大きなカワハギ、いらないんですか?』
「うん、だって、痩せててキモ入ってないもん!」
ああ、思いっきりセリが出来る水族館作ってくれないかなあ~
ごめんなさい、ヒンシュクです。
葛西臨海水族館