足繁くかよう台湾料理屋<華華(ファーファー)>
そのマスターが、入院したという。
72才になるまで、病気一つしなかったと云うのだから、
そちらの方が驚きだ。
手術をする段取りになったのだけれど、
はたと、大きな問題が持ち上がった。
血液検査をしたところ、なんと!
<
AB型RHマイナス>
日本人の30万人に一人と云われる、希少血液型だったのだ。
ざっと計算して、日本に400人しかいない型である。
その昔、テレビドラマなどで、取り上げられた事もある。
怪我をするなど、もってのほかの血液だ。
マスター本人は、泰然としたもので、
成るように成ると、背筋を伸ばしていたところ、
医師から、喜ばしい情報が授かった。
この辺り、厚木基地が近い。
日本人以外では、このAB型RHマイナスは、
さほど、希少な血液型ではないらしい。
いざとなれば、腕を差し出してくれる兵士がいるそうだ。
ありがたいものである。
さて、手術も成功し、
ベッドで、数日を過ごしていたマスター。
まだ、
麻酔効果が、抜け切れていないらしく、
看護士さんが、病室に入ってくると、
「いらっしゃいませ~」
本人は、台湾料理屋のカウンターに立っているらしい。
携帯で奥様に電話をし、
「今、バンバンジー出来たから持っていくネ」
仕事一筋に生きてきたマスターは、せっかくの病気休暇も、
厨房から出られない宿命なのだ。