チリの地下からの救出劇に、釘付けになった。
結果、良かった、良かった。
そういえば、30数年前、確かイタリアで、
井戸の中に、落ちた子供の事件があった。
井戸ったって、
子供がやっと入れる位の小さなタテ穴である。
発見された時には、すでに、数十m滑り落ちていた。
さて、どうやって救出したのか?
当時、数日に渡ってテレビ放送されたニュース映像を、
食い入るように見つめていた記憶がある。
「ただいま、
サーカスの団員が、呼ばれました」
アナウンサーがイタリア語で、実況する。
「普段、軽ワザをやっている彼の両足に、
ロープを縛りつけ、逆さまに吊るして、
井戸の穴に、下ろすようです」
小さな
軽ワザ師のサーカス団員が、自らすすんで、
救出に手を挙げたのである。
サーカスと聞いて、身を乗り出さずにはいられない。
私は、サーカスにいたのだ。
ピエロをやっていたのだ。
一輪車に乗っていたのだ。
トランポリンをやっていたのだ。
空中ブランコで空を飛んでいたのだ。
「え~~~!」
とか、驚いてくれると嬉しい。
「やっぱりネ」
でも、少し嬉しい。
「ただいま、降り始めました」
暗く狭い穴に、逆さま宙吊りで、彼は降りてゆく。
「すでに、数十mロープが伸びました」
時間も、数十分経過している。
「いったん、上がってくるようです」
プロの軽ワザ師とはいえ、長時間の逆さ吊りで、
頭に血が昇ってしまい、危険信号が発せられたのだ。
「再び、降りるようです」
今回のチリと比べると、昔日の感がある。
アナログ力を試されたような、
チリの救出劇を、喜ばしく思いながら、
もっと遥かな人間力で救出に向かった、
サーカス団員がいた事を忘れたくない。
実は、その後、救出が成功したのか・・記憶がない。
ない・・と云う事は・・・
・・助かっていた事を願う。