我々ウインドサーファーが足繁く通う、本栖湖に、
20年ほど前、怪しげな物体が沈められていた。
水深が深いことで知られる本栖湖の西のはずれに、
筏のような物が組まれ、水中に何やら金属が、
吊り下げられていたのだ。
なんだろう?
ウインド初心者の私の疑問に、
当時ウインドの先輩であったナカヒラ君が、
鼻高々に、のたまう。
「
ニュートリノ検出器さあ~」
『何それ?』
「わからん」
しかし、10年ほど前のある日、ソレは撤去された。
そして2年後、ノーベル物理学賞が発表される。
小柴昌俊教授。
《カミオカンデ》という、鼻をカミそうな名前の装置を、
地中深くに設置して、ニュートリノを捕まえたのである。
本栖湖で捕まえそこなったニュートリノは、
岐阜県の地中1000mのところに大量の水のプールを造り、
13000本の光電子増倍管という装置で、
検出しているのだ。
要は、
冒頭の写真が<光電子増倍管>である。
直径50cmほどの真空管だ。
こんなのが地中に、1万3000本も並んでいる光景は、
どんなだろう?
「見えたか?」
本栖湖に、石を抱いて潜り、
検出器の正体を確かめに行った我々。
『見えた』
「アレはなんだ?」
『わからん』
その昔、小柴教授の偉大さも知らず、
魚のたまり場となってしまった装置の周りで遊ぶ、
お馬鹿なウインドサーファーであった。
本栖湖