<鯛の塩焼き>
好きですか?
代表的な意見を連ねてみよう。
「鯛の塩焼きねェ~結婚式の時に出てくるヤツねェ」
「ああ、コチンコチンになってる冷たいヤツね」
「小骨がいっぱいあって、食べにくいなあ~」
概ね、こんな意見が多い。
これは、しょうがない。
冷えたヤツしか食べさせて貰ってないからだ。
一匹丸ごと、焼くのは手間がかかるし、
そんな贅沢は、そうそうできない。
たとえ焼いたとしても、
焼きたてを食べるには、
微妙なタイミングがいる。
走り回る子供をひっ捕まえて、
テーブルに座らせなければならない。
だらだらと、刺身に舌鼓をうつ大人の箸を、
湯気の出る、塩焼きに向かわせなければならない。
「鯛の塩焼きぃ?旨かねえだろ・・」
文句を言う大人の口に、
その暖かい身を運んで貰わなくてはならない。
ところが、いったんその身を口に入れた途端!
「うわあ~~なんだなんだ!」
大騒ぎが勃発する。
「何これ?こんなの食べたことな~い!」
周りから、箸が伸び、
箸と箸がぶつかり合う合戦が始まる。
焼き物とは、
暖かいうちが華である。
特に、鯛に関しては、焼きたてと、冷え切ったモノとで、
月と、風呂オケほどの差がある。
そうだ、自分で鯛を焼いてみましょう!
大きさは、400グラム(30センチ)以下がよい。
大きいと上手く焼けない。
ウロコを取り、パラパラと塩をして、30分ねかす。
カンカンに暖めた魚焼き器に入れ、
両面焼きなら、13分。
片面焼きなら、8分と、裏返して5分焼く。
焼き過ぎないことが、コツ。
肝心なのは、
焼きあがったらすぐに食べられる体制を整えること!
携帯が鳴り出しても、出てはいけない。
玄関のブザーにも居留守を使いなさい。
冷え切った鯛の塩焼きの概念を払拭するために、
アナタは全霊で取り掛からなければならない。
一匹の鯛を家族全員で、つつくならば、
その時だけは、
ハイエナの食事風景をマネた方が賢明だ。
マネなくとも、そうなるかもしれん。