え~昨日の釣果(ちょうか)である。
大きな鯛は全て、私が吊り上げ、あと残りは、
同行のナカヒラ君が釣り上げた。
「アレっ、変なのが混じってない?」
気付いたアナタは偉い。
左下のほうに、腹がプックラと膨らんだ魚がいる。
そう、何を隠そう、ヤツが、悪名高い、
<フグ>である。
何フグかは、分らないが、毒があるフグに間違いない。
「コレって、食べられないの?」
ナカヒラ君が訊く。
『食べられるよ、フグ調理免許持った人が捌けばネ』
「美味いの?」
『うん、
もの凄くネ』
「免許持ってないの?」
『持ってたら、役者やってないでしょ』
「もし、持ってない人が捌いて食べたら?」
『死ぬナ』
「絶対?」
『ほぼ』
その夜、我が家では、隊員のYが、フグと格闘していた。
捌く練習をしていた。
カワハギやヒラメの薄造りの練習に、
フグに許しを請うて、捌いて盛り付けているのだ。
出来上がったお造りは、お世辞にも薄造りとは呼べなかった。
写真に撮って、ナカヒラ君に転送した。
送るや否や、矢のような返事がきた。
「食ったの!」
『いや、食べてないよ』
「だって、刺身にしてるじゃん!」
『食ったら、死ぬって』
「昔、捌いて食ってたって言ったじゃん!」
『それは、小学校の頃におふくろがネ』
「で、旨かった?」
『だから、食べてないってば』
「釣ったのはオレだからね」
『はいはい、食べてないけど、ありがとさん』
餅は餅屋に、フグはフグ屋で。
フグ薄造りのつもり