「ウミネコの群生地は、すぐそこですよ」
教えてくれたのは、旅館のお母さんだ。
十数年前、青森は八戸の海岸線にある、宿にいた。
夜になると、打ち寄せる波の音が、眠気を誘ってくれる宿だった。
「あんた、魚好きなら、市場に行ったらいいよ」
お母さんに勧められて、
八戸の漁港近くにある、市場に向かった。
大きな市場だ。
海産物が、てんこもりで並べられている。
並べきれない魚が、地面にあふれている。
(ううぅ、食いたい)
誰もが、この市場で思う。
(ううぅ、今すぐ食べたい)
誰もが、市場の中で涎を流す。
「あんた、買ってナ、すぐソコで食べナ」
すぐソコと、言われた場所を見ると、
市場の一角が、バーベーキュー場所になっていた。
『おばちゃん、コレとコレとコレ下さい』
魚と貝を買い求めた。
真っ赤に燃えた炭が、運ばれてきて、
自分の食材を、アミの上に乗せる。
ジュージューと焼ける魚たち。
香ばしい香りが立ち込める。
「えっ、ビール頼めるんですか?」
八戸の浜辺は、私を喜ばせてくれた。
逃げていただけただろうか?
どうか・・