~昨日からの続き~
動かない地下鉄の中で、目を閉じていた。
(動かない・・地下に閉じ込められる)
皆が、無意識に目だけを動かし始めた。
情報に飢え始めた。
やがて・・
吊り輪から手を離し、手が動く。
何を探すでもなく、動いている。
10分・・・15分・・・
灯りは点いたままだ。
私の目は開いたり、閉じたり。
都会の性格上、一人単位で乗る人が多いせいか、
会話が少ない。
それでも、会社の同僚系の会話が聞こえる。
「間に合うかなあ?」
「○○駅まで行けば、乗り換えられますよ」
学生系の会話も聞こえる。
「んだよ~飯食えねえじゃ~ん」
「そういう事、言うなってぇ」
知識人もいるらしい、おまけに声が大きかった。
「地下トンネルってさ、水が入ってくるんだよネ。
テレビで言ってたけどさ、
あっという間に水没するらしいヨ」
私の両手は空いている。(リュックにした)
目も暗闇に慣れている。(目をつぶった)
いつでもダッシュできる。(ストレッチ済み)
いざとなれば、両手に一人づつ掴めるかもしれない。
ガタン・・
「次の駅まで、徐行運転をいたします」
先程よりむしろ緊張したアナウンスが流れる。
プシューッ
駅に着いて扉が開いた。
恐れるのは、
全員が、われ先にホームに飛び出すことだ。
ところが!
降りたのは、全体の3分の一だった。
走らずに、地上まで階段を上がる。
上がりながら、考えた。
レスキュー隊員は、こんな有事に、訓示を受けるという。
「自分の命を守れない奴に、人を救う力はない」
果たして、おいらは、人を救えたのだろうか?
いざとなったら、役に立ったのだろうか?
少なくとも、一人は担げる準備をしたぞ。
しかも、あの日の前日、実は、未公開の
地下サバイバルパニック映画を観ていたのだ。