「弥山(みせん)に登らんかい?」
タメトウさんが誘う。
広島県の安芸の宮島の島に、山があると言う。
「標高
400mじゃけ、すぐ登れるケ」
こともなげに広島便で言うタメトウさんに、下駄を預け、
世界遺産!の厳島神社!の観光もほっぽらかし、
靴紐を結びなおし、
いざ、ミセンへ!
歩き始めてすぐに悟った。
この島は、岩で出来ている。
岩が石を含み、土を手なずけている。
従って、歩く道は殆ど石の上を歩く。
石の階段だ。
四国の金比羅山が、千何段だか忘れたが、
その上を行くのは間違いない。
言わば、修行の登りが続く。
「ボクの勘だと、もう、400mは登ったと思います」
『ああ~ほうかえ』
タメトウさんの広島弁は、ヌカに釘だ。
二股の分かれ道が現れる。
「どっちの道に行ったらいいんですか?」
『わしが登ったのは子供の頃じゃけん、忘れちもうた』
「案内するって、言ったじゃないですか!」
『ああ~ほうかえ~』
着いたあ~
頂上は、
529mの標識があった。
「400mじゃないじゃ~ん」
『伸びたんかのう・・
あれは、子供の頃じゃったけのお』
「何年前ですか?」
『30年ほど前じゃあケ』
「タメトウさん、もう60だいぶ超えましたよね。
30年前は子供じゃないと思いますよ」
『ああ~ほうかえ』
数字に弱いお元気なタメトウさんであった。
しまった、世界遺産
厳島神社の拝観を忘れた