「おお、なんだ?アノ山は!」
見事な三角形の山が、目の前に現れた。
広島県の庄原市の北西に、その山はあった。
<八国見山> (やくにみやま)
その昔、頂上から、八っつの国が見えたそうナ。
珍しいことに、
この山、どこから見ても
三角形なのだ。
火山じゃないのに、これほどの円錐形をしている山には、
そうそうお目にかかれない。
これは、もう登るしかない。
急遽、探検隊を拵えた。
隊長含めて、3名。
雪が積もっていると思われるので、長靴での登山となった。
どこから、登ろうか?
地元民の為籐(タメトウ)さんの案内で、麓までゆく。
「わしも登ったことないでのう」
頼りない案内人である。
「ま、円錐形だから、どっから登っても、
いずれ頂上に着くじゃろぉ」
まっこと、お気楽な案内人である。
長靴は正解だった。
歩き始めた途端、大量の雪に見舞われた。
先人が歩いた足跡が全くない。
「この山は、今年になって、誰も登っちょらんじゃろぉ」
不安をあおる案内人である。
うぅ~登山道がわからない。
適当に、雪を蹴散らかして登ってゆく。
円錐形なのだから、崖や、川はない筈だ。
とりあえず、高度を稼いでさえいれば、
いずれ、山頂に着くに違いない。
しかし、相当の急斜面。
胸つき八丁ってやつだ。
『わっ、動物の足跡!』
「そういえば、ここんとこ
熊注意報が出ちょったのお」
『そういう事は早く言ってください!』
「ほんじゃけど、コレは
猪じゃな」
ふむふむ、良く見ると、ヒヅメの痕が残っている。
「ほんだら、猪に案内してもらおうかいのう」
よくよく、能天気な案内人である。
「猪にも、風流な奴がおってじゃな、
頂上まで、景色眺めに行ったんかのう?」
そんなワケはないと思いますよ。
たまたま、頂上に行ったんとちゃいまっか?
着いたあ~!
「こん美しい山は、
アサヒビールのCMに登場しているでのう」
その情報も、先に言ってください。
八国見山 山頂