山口県の秋吉台には、450もの鍾乳洞がある。
観光化されているのは、ほんの一部だ。
その中でも、とても美しい鍾乳石があり、
一般人立ち入り禁止という洞窟がある。
<中尾洞> (なかおどう)
「え~イシマルさん洞窟ばっかり入ってるんですね~」
いやいや、今回のは、テレビ番組の取材だったのだ。
すでに、先月放送されちまったが、
さすがに、立ち入り禁止だけの事はあった。
入り口は、山の上、鉄格子の網があり、
鍵が掛かっている。
勿論、中は手付かず。
灯りは無い。
ヘルメットにヘッドランプ、ツナギの服に、
頑丈な登山靴だ。
入洞して、10mも進むと、明かりが乏しくなる。
試しに、懐中電灯を消すと、自分の手が見えない。
私の考えでは、地下洞窟ってのは、3つに別れる。
・水が豊富で、ジャージャーと流れている洞。
・全く水が無く、乾燥している洞。
・その二つの中間で、泥でぬかるんでいる洞。
中尾洞は、三つ目のじめじめした洞だ。
靴が泥に埋まりこんでゆく。
陶芸家が喜びそうな泥質で、かなり練りこまれている。
ゆえに、本来白いはずの鍾乳石が、
茶色に染まっている。
見方によっては、チョコレートタワーにも見える。
「ねえ、旨そうじゃない」
思わず、舐めたい衝動にかられる。
同行のバナナマンは、衝動を抑えられずに、
実際、舐めてしまった。
カメラも回っていないところで・・
洞窟は、まだまだ探検されていない場所だらけである。
支洞という、別れ道もたくさんある。
その支洞だって、洞内のてっぺんにあるのかもしれない。
ちいさな隙間の向こうに、
広大な空間が広がっているのかもしれない。
《夢は地底荒れ野をかけめぐる》