我が家のネズミの額の庭に、梅ノ木がある。
今年の実の付き方は、悪かった。
悪いなりに収穫がある。
梅ノ木の収穫は面白い。
りんごやミカンは、緑の葉っぱの中にある、
赤だのオレンジの実を見つければよい。
見つけるも何も、見つからないわけがない。
ところが
、梅は青いうちに採る。
当然の如く、
保護色との闘いである。
「おお、随分採ったナ、もう無いだろうナ」
梅ノ木を見上げながら、溜息をもらす。
実は、梅採集とは、ここからが本番だ。
「あれっ、こっちにまだあったゾ」
よくよく見れば、まだ残っている。
「もう無いだろナ」
しかし、見る方角を変えれば、青々した実が隠れている。
「よし、これで全部だナ」
っと、木の下から出てきて振り返れば、
あっちにもこっちにも、麗しい緑の玉がぶら下がっている。
「いくらなんでも、もうお終いだろう」
ところが、梅ノ木はまだ許してくれない。
葉の影に、5つほど固まりで待っていたりする。
「さあ、終わった、洗おう」
去り際に、チラっと首を回すと、
案の定、テッペン近くに、凛とした宝石が鎮座している。
「あと、一個でもあったら、腹かっ捌いてやる!」
武士でもないのに、大言を吐いてみた。
吐いたものの、このあと、
10回も腹をかっ捌かなければならなくなった。
終わってみれば、最初に「もう無いだろナ」と思った時の、
倍の量を収穫したのである。
コレって、何かに似ているナ。
なんだろう?
あっアレだ。
リンスだ。
「もう無いだろナ」と思ってから、10日はあるもんネ。