隠岐に、<マキ>という場所がある。
牧と書く。
牧場(まきば)の牧だ。
つまり牧場。
牛と馬を、放し飼いにしている。
この牧畜方法は、江戸時代以前から続いているらしい。
山の上に、それはある。
元々、山の上まで作った段々畑を、
4年周期で輪作していたそうだ。
麦や、野菜を作ったあとに、牛馬を放し、
糞をしてもらう。
そうする事で、肥沃な土地を造ってきた。
今では、段々畑を耕作する人がいなくなり、
牛や馬が草を食む、緑の草原だけが残った。
「牛だけじゃ駄目なんですか?」
地元の農家の方に訊いてみる。
『あんた、牛はなあ、
長い草しか食わんのヨ』
「はあ」
『馬はなあ、
短い草を徹底的にバリバリ短く食うんじゃナ』
「バリバリと」
『それに牛はなあ、たいした量、食わん』
「うっそ!」
『ちょっと食っちゃあ、寝そべってばかりじゃ』
「そういえば・・」
『馬みちょってみな、一日中バリバリ食うちょる』
「うん、バリバリ」
『馬がおらんと、こんな草原はでけん』
言われてみれば、そうだった。
思い出してみる。
与那国島の岬の草原にも、馬がいた。
宮崎の都井岬も、馬と草原が名物だ。
ゴルフ場のフェアウエイと見まごう芝生が見られる場所には、
必ず、馬が観光写真に写っている。
『牛だけで、馬がおらんかったら、この美しい草原はでけんヨ』
イヤッホ~~!
あまりの美しさに、草原を走り回った。
断崖絶壁の上に、草原はある。
イエエ~~イ!
ケつまづいて転んだ。
目の前に、糞があった。
ケつまづいた原因も、糞だった。
昔、教わったナ。
牛の糞を踏んだら、足が遅くなり、
馬の糞を踏んだら、足が速くなる。
今のは、どっちだろうかな?