ざ~んね~んは、続くものである。
《廃線になったトンネルが、一般公開されているヨ》
私の耳に吹き込む方がいる。
そんな素晴らしい情報が、耳からこぼれないうちに、
車を発車させる。
山梨県の勝沼に、中央本線が走っている。
勝沼ぶどう卿という駅から、隣の駅まで、
今は使われなくなったトンネルが残されている。
そこを歩いていいと云うのだ。
トンネルを歩いていいと言われて、
歩かない手はない。
いや、足はない。
行程30分だと云う。
駐車場に着いた。
レンガ造りのトンネル入り口が見える。
興奮がイヤがうえにも高まる。
ヘッドランプの紐をギュっと握り締める。
トンネルの方へ一歩踏み出す。
ん・・?
入り口に鉄格子がある。
鍵がぶら下がっている。
ど、どぎゃんこつネ?
隣に、ワイン工房があったので、
案内のおねえさんに詰め寄った。
「わざわざ遠くから来たんですが・・」
『はあ、この間の大雨で、雨漏りがひどくて・・』
「ふむ、それで?」
『当分、入れないんですヨぉ~』
「ヨぉ~じゃないですヨぉ~」
ルンルン気分で、駆けつけたのに・・
ガックシ・・肩をうなだれていたら、
『そっちの先のトンネルなら入れますヨ』
「えっ、そういうこと早く言って!」
『ワインの貯蔵庫になってます』
トンネルは、谷でいったん地上に出て、
すぐに又潜っている。
「おじゃましゃ~す」
鉄の扉をクグルと、ヒンヤリ冷気が流れる。
両側に、ワイン棚が並んでいる。
一直線に、遥かかなたまで、続いている。
『こちらには、企業の他に、
一般の方もワインを貯蔵できます』
「私でも?」
『あなたでも』
「おいくらで?」
『これこれで』
ふ~ん、いいなあ。
いいけど、飲みたくなったら、
ここまで取りに来なくちゃならんのか?
自宅の半地下に隠してあるワインを取り出すのさえ、
億劫がっている人間が、
ここまで、取りにこなくちゃならんのか?
by ishimaru_ken
| 2011-07-06 09:40
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