《樹海遭難ツアー》
イシマル探検隊の今夏の目玉はコレだ!
われら3名の、命がけ隊員たちは、
富士山の青木が原樹海の地に立った。
「忘れ物のないように!」
忘れ物大将のイシマル隊長が号令をかける。
「これより、登山道を歩き、その後、林道に分け入り、
更にその後、
樹海に突入する。覚悟はいいな!」
おお~!
樹海は昼でも鬱蒼としていると言うのは、間違いだ。
お日様さえ出ていれば、それなりに明るい。
ただし、曇っていれば、お日様の向きが解からない。
つまり、方角が解からない。
しかして、迷う。
それが、富士山の樹海だ。
さあ、いよいよ、樹海に分け入る。
持ってきた
赤いヒモを取り出す。
目印に木に引っ掛けていくのだ。
試しに、目印なしで歩いてみたのだが、
20m進むと、帰りの道がわからない。
木々が入り乱れているのと、
あまりにも風景が似ているからだ。
木の根っこがデコボコしているので、
山の傾斜すら、感じられない。
6~8mに一本、赤いヒモを引っ掛けてゆく。
さて、500mも徘徊しただろうか・・
風穴も見つけたし、
さあ、帰ろう。
イシマル隊長から、滝田隊員に声がとぶ。
「滝田くん、帰りは先頭で、
赤いヒモを回収してネ」
『ヒモ・・あいよ』
歩き出して、すぐに滝田くんの動きが止まった。
「どったの?」
『
ヒモってどこ?』
「どこって、ほらすぐソコにあるじゃん」
『わかんない』
「え~~?緑の中に、くっきりと
赤いヒモが浮き出てるじゃん」
『見えない』
この時、知ったのだ。
滝田くんは、赤緑色弱(せきりょくしきじゃく)だったのだ。
小学校の頃の目の検査でやったよネ。
アレである。
緑だらけの中に赤いモノがあっても、判別できないのだ。
「えっ、じゃあ、信号機は?」
『それは、解かるよ』
「クリスマス飾りは?」
『解かるって』
でも、あの木にぶら下がっている赤いヒモは、
見えないというのだ。
『いや、見えないんじゃなくて、解からないんだヨ』
赤と緑がゴチャゴチャしていると、判別できないらしい。
ふ~ん。
隊長がわざわざ、作ってきた赤いヒモは、
役に立たないじゃないか。
「じゃあ、往きに、オレがヒモを引っ掛けていたのは、
何してたと思ってたの?」
『なんか、手を挙げたり下げたり・・』
そうなんだ。
遭難だツアーは、まだ始まったばかりであった。
コレが見つけられない滝田くん