<遠近法>
《我々人類は、
ユトリロの遠近法に、染まってしまった》
おおっと、今、凄いことを言ってしまった。
ユトリロとは、巨匠画家のユトリロだ。
ユトリロの絵に描いてある、ビルの斜線を延長すると、
キャンバスの一点に、集まる。
ユトリロ以前の絵画の遠近法は、
《近くの物は大きく、遠くの物は、小さく》
《近くの物は、遠くの物をしばしば遮る》
日本や中国の水墨画の技法は、コレであった。
っと、ここまで遠近法の基本を、さわってみた。
さて、ここで、話を大きくしよう。
アナタは、宇宙旅行をしている。
太陽系を離れ、遥か遠くまで旅行してきた。
今、太陽系に、やっと帰ってきた。
冥王星の軌道辺りまで帰ってきた。
そこで、問題だ!
「ここから地球に帰るまで、
どんな風景が見えるでしょう?」
SF映画の場合を見てみよう。
アナタの宇宙船はグングン進み、
冥王星の次に、海王星が現れ、その先に、天王星、
さらに土星が輪っかを輝かせて、見えてくる。
遠くに、次の木星さえ見えている。
気づきましたか?
これこそが、ユトリロの遠近法なのだ。
ユトリロは肉眼で見える近い範囲の遠近法を表現した。
しかし、宇宙は、アホみたいに広大だ。
ユトリロの遠近法は役に立たない。
実際に、宇宙から帰ってきたアナタが、目にする光景は、
アナタがこれまで見た事のある風景とそっくりだ。
《夜、地球上で見上げた星空》
例えば、
アナタが木星軌道に居たとしましょう。
見えているのは、
光る太陽と、ただの星々。
アナタが、火星の軌道に居たとしましょう。
見えているのは、
光る太陽と、ただの星々。
ついでに言いましょう。
アナタが地球の軌道に居たとしましょう。
見えているのは、
光る太陽と、ただの星々。
理解できたかな?
つまり、アナタが、太陽系に帰って来ながら、見える風景は、
光る太陽以外は、すべての星が、
小さく光る点に過ぎなくなるのだ。
宇宙船がどんなにスピードを上げようとも、
SF映画のように、
星が後ろに飛んで過ぎることはない。
仮に、冥王星起動から、地球まで、
5秒で帰ってきたとしても、
星が、飛んで過ぎることはない。
最後の最後に、地球が、ちょっとだけ大きくなるだけだ。
宇宙では、従来の遠近法は忘れよう。
今、話した事を、例えで立証するなら、
月の話をした方がはやい。
小さい頃、
お月さまがず~っと追いかけて来たよネ。
あれは、月があまりにも遠くにあるので、
近くにあるものとの、遠近法が役に立たなかったからです。
ジャクサの職員になったイシマル