『そうだ!裸足で歩こう!!』
32年前、大学生のころの話です。
この石丸青年は次の日から
『裸足の生活』を始めたのでありました。
家の中はもちろん、玄関からそのまま裸足で突き進み、
道路をそのまま裸足で歩いていくのでした。
東京って街は、裸足に実に向いている。
食堂に入る、もちろん裸足。
大学に行く、もちろん裸足。
電車にのる、もちろん裸足
…電車これが怖いんですなぁ~、
革靴とハイヒールのタップダンスのごとき襲撃!
揺れるたびにワザとのごとく、踏みつけてくる
(…ような気がする)。
自然、内股になり縮こまり、指先をキュッと丸めた
<よいこの裸足ちゃん>になってしまう。
それはさておき、この開放感はたまらない!!
地球だの大自然だの、野性になったような気がする。
野良になった気がする。あー青春!
「じゃあ、デメリットはないの?この野生人」
デメ1・真夏のアスファルトはとんでもなく暑い!
よって日陰しか歩けない。
日陰から日陰に向かって疾走する。
日陰で呼吸を整え、更に次の日陰に向かい疾走する。
まさに野良猫。
デメ2・東京の冬は寒い。アスファルトは冷たい。
裸足でしばらくじっとしていると
アスファルトに足裏の皮膚が張り付いてしまいそうになる。
よって常に走っているしかない=裸足のランナー。
デメ3・常に腰にビニール袋&濡れ雑巾を用意。
自宅はもちろん、よそさまの美宅に上がる際には
その雑巾で足をふくこと。
あー楽しき裸足の大将。
さて、この裸足人生をなぜ止めたのでしょうか?
ある日、電車の中で、妹の友達にバッタリ会ったのです。
「あっ!石丸さんのお兄さんだ~!」
話が弾み、弾んでいるうちに彼女の目線がふと我が足元に落ちた。
そのとたん、…暫し沈黙。
弾んでいた話はどこへやら
彼女はふらっと次の駅でおりてしまったのでした。
ガーーーーーン!!
石丸心の声「いかん、このままではオラの妹が結婚できねーだ。
兄んじゃがアホじゃで…」
次の日の朝。
一年数ヶ月ぶりに、靴を履いて闊歩する
<文明人・石丸>の姿がありました。