「いっつもサンマばかり焼いていては飽きちゃうヨ」
ナカヒラ君の意見を尊重して、
昨日のキャンプでは、アジを焼いた。
長崎産の立派なアジを手に入れた。
サンマより、脂分が少ないゆえ、
さほどパタパタ扇がなくていいので楽だ。
10分もすると、コンガリ焼き目がついてくる。
「ほ~い、もう食べられるゾ~」
皆のハシが伸びる。
皮をほじった途端、
ポワ~ン
アジ特有のいい香りがまき散らされる。
見事に焼けた水分をたっぷり含んだ身を、口に運ぶ。
「おおお~~~うま~い!」
全員の大げさな感嘆の声が漏れる。
ハシが止らなくなる。
お皿に一匹づつ取るという、基本的な行為を忘れてしまう。
焼きながら、食っている。
ホジホジ、ガツガツ!
その時、我々は、悲惨な結末が来ることに気づいていなかった。
我らの金網は、
2段にしてある。
火から、アジを遠ざける為だ。
<遠火の強火>を実践しているのだ。
その上げ底には、ビールの空き缶を利用している。
空き缶を4つ、縦にグシャリと潰し、
四隅に立てるのである。4つの柱を立てる、と言い換えよう。
これはこれで、正しい《火から遠ざける方法》であった。
しかし、ビールの缶と金網は、摩擦が少ない。
滑る。
振動を与えたくない状態を維持している。
そこに、3人のハシが、忙しくアジを突いているのだ。
ガシガシガシ・・
すると、どうなる?
それは、一瞬でおきた。
《崩落》
見るも無残であった。
我々の落胆さは、秋の夕焼けさえ、
冷え冷えと染めさせるに充分だった。
2021 9