フリークライミングをしている。
一人が登り、一人がビレイヤーといって、
ロープで確保をしている。
ロープは、壁のてっぺんのリングを通して、
登る人とビレイヤーとを繋げている。
みんなは、壁の回りで、応援する。
「ガンバ!」
なぜか、クライミングでの掛け声は、「ガンバ」だ。
<レ>はどっか行ってしまったらしい。
さあ、ある日の事だ。
2回連続早登りのタイムを競おうと言いだした。
てっぺんに登っては、降り、又登っては降りるのである。
もの凄い速さで登る。
地上を歩いているのと変わらない程の速さだ。
したがって、ビレーヤーは、ロープを握ったまま、
どんどん
壁から離れてゆく。
降りる時には、
ビレーヤは、どんどん
壁に近づいてゆく。
・・・筈だった。
挑戦しているのは、私だ。
確保しているのは、Y子だ。
私とY子では、体重が明らかに違う。
しかし、重い人を、軽い人がビレーする事は可能なのだ。
ロープの弾力と、摩擦を利用している。
ただし、
ゆっくりやればの話である。
私が凄まじい速さで、頂上に達した。
ビレーヤーのY子は、どんどん壁から離れる。
私が、ピョンっと跳び下りた。
すると、どうだ・・?
この状況が、映像化されない方の為に、あれを想像して貰おう。
昔の井戸で、水をくみ上げるオケがあるね。
上部の滑車を通して、両側にオケがぶら下がっているヤツ。
あの片方を、井戸から遠く離した地面に置いて、
もう片方にスイカを入れて、井戸の上で手を離すとどうなる。
そうなのだ、それと同じ状況が起こった。
ロープに引っ張られたY子が、その反動で、空中に舞い、
地上スレスレを壁に向かって滑空したではないか。
ブ~~~ン
そして、やがて・・・
バチ~~~ン!
Y子は壁に激突したのである。
まるで、カエルのように・・
さらに、その上に、私が降ってきたのである。
グエっ!
災難とは、かくのごとし。
それでも、Y子は、ロープを離さなかった。
偉い!
いや、頑丈であった、パチパチパチ。