<せっちん育ち>という言葉がある。
せっちんとは便所である。
便所育ちと揶揄されるのは、
ドアを開けたら閉めない性格の人。
彼らを非難している。
昨今、自動ドアが増えたので、
閉めるという習慣が廃れてしまった。
っと、ここに、<閉める>達人が現れる。
私である。
私は、ドアを見事に閉められる。
その見事さを、教えよう。
ここに、ありふれたドアがある。
丸い金属の取っ手がついており、捻ると開くタイプだ。
このドアを開け、通り過ぎるや、
後ろ手で、ポ~ンとドアをほおるのである。
すると、ドアはゆっくり・・それでいて素早く閉じてゆく。
やがて、徐々にスピードが弱まり、
最後の最後に微速となり、
まるで計算し尽くしたかの様な見事なドッキングをみせて、
ドアは閉まる。
その時、ドタンとか、バタンという音は立たない。
ガチャリッしかも、ガの音が、gaではなく、
ngaと、nの文字が入る感触の音色だ。
リッの音が、金属と金属が、
最後にはまりきった接合の音色をたてる。
ゴルフに例えれば、パターで打ったボールが、
最後のひと転びで、コトリとカップインする様子に似ている。
そして、このドア閉め達人の技は、
何度でも、実行できる。
目をつぶっても、出来る。
間違っても、バタンはない。
ただし、このドア閉め職人にも、泣き所がある。
それは・・・
我が家の、このドアしか、ワザを発揮できないのである。