「へへへ、おいらは忍者だぁ~」
小学生のけんじろう君が、屋根裏にひそんでいる。
勉強部屋の押入れの天井を押したら、
板が一枚はずれたのだ。
懸垂して、頭だけ突っ込んでみる。
ふ~む暗い・・
暗いものの、どこかからか、光が差し込んでいる。
(よし、忍者になろう!)
鼻と口に手ぬぐいを巻いて、天井裏に忍び込む。
とはいえ、これが難しい。
天井裏は、基本的に安普請だ。
頑丈な梁は、少ししかない。
あとは、その梁を頼りに、
細い木枠に薄い天井板を貼り付けているだけだ。
間違って、天井板に足を踏み出せば、
バリバリバリッ!
足が天井を突き破り、
「おのおのがた、くせものじゃ~!」
下から、槍で突かれるやもしれぬ。
(古いナ)
ヤモリと化したけんじろう君は、屋根裏を這いずる。
父親に言わせれば、天井裏には、
「テンが棲んでおる」らしい。
そういえば、夜、頻繁に
天井裏を走る足音が聞こえた。
ネズミよりゆっくりの、リズミカルな足音だった。
父親は、
テンだと断定した。
「イタチじゃないの?」
「いや、テンだ!」
(テンを知らない方は、お爺ちゃんに訊きましょう)
よし、そのテンを見つけてやろう!
そろりそろりと這いずりまわる。
何かの動物の、フンがあちこちにある。
それ以外何も無い。
クモの巣もない。
綺麗に片付けられている感の天井裏であった。
忍者には、物足りなかった。
解かった事は、天井には、隙間がたくさんあり、
明かりが漏れているってことだった。
忍者のように穴を開けなくても、下の部屋がよく見えた。
翌朝・・朝ごはんを食べながら、父親がつぶやく。
「ゆうべ、テンがうるさかったナ」