そこは、<椿のトンネル>だった。
三浦半島の山の中を歩いていた。
3月の下旬・・
突然、地面が赤く染まりだした。
ボトリと落ちたおびただしい
椿の花だった。
椿の花のジュウタンと言いたいほどの、
おびただしさだった。
登山道をさらに進んだ。
椿のトンネルはまだまだ続いた。
時間にして30分・・
椿だらけの美しい山道を歩き続けた。
こんな桃源郷のような場所があるんだ!
「ここで問題です」
隊長のイシマルが、せっかくの花盛りにチャチャをいれる。
「
椿とサザンカは、何が違うのでしょう?」
隊員が考え込む。
確かに、椿とサザンカは見た目がソックリだ。
「サザンカ、サザンカ咲いた道ぃ~♪」
焚き火だタキビだ・・と歌うからには、季節は、真冬だ。
ところが、椿だって、真冬に咲く花だ。
では、何が違うの?
答えを云おう。
花が、ボタリと固まりで落ちるのが、椿。
花が、ハラハラと桜の様に落ちるのが、サザンカ。
江戸時代には、椿がボトリと落ちる様子が、
武士が首をボトリと断首される姿を連想すると云う事で、
忌み嫌われる時代もあった。
しかし所詮、それは、町中の椿だ。
山の中の椿は、ボトリどころではない。
何百、何千というボトリが、山道に落ちている。
ジュウタンと化している。
あまりの美しさに・・・
ナカヒラ隊員が、ポツリと漏らす。
「ボクって、もう天国にいるのかな?」