魚屋の前を通りかかると、目が一点に集まる。
サバがいる!
丸々と太ったサバが、手招きしている。
銀色のプックラした腹を、
これみよがしに見せ付けている。
「買った!」
気がつくと、一本の大きなサバが、
買い物籠の中で揺れている。
たったこれだけの文章にすでに間違いがある。
《魚屋の前を通りかかると・・》
と、 たまたま通りかかったかのように述べたが、
正しくは、《 わざわざ通りかかった》のである。
目的が、魚屋見物なのだ。
この見物は、一軒の魚屋で終わらない。
数軒の魚屋をハシゴするのが、日常茶飯事。
家から半径10キロ圏内の魚屋は、全部知っている。
ハシゴをするから、何も買わない店が当然でてくる。
ただ見るだけ見て、通り過ぎるのだ。
「あ、又何も買わない客がきたぞ」
店主は、声には出さずに、チラ見をする。
さあ、今日はサバを買った。
よおし、シメサバだあ~!
喜び勇んで、冷蔵庫の扉を開ける。
ガ~~~ン!
目の前の棚に、
シメサバがラップに包まれているではないか!
そうだった・・
一昨日、見事なサバを見つけたので、
シメサバを造って食べた残りだ。
サバが有るのに、
又サバを買うという失態を演じてしまった。
コレは、本屋で、買い求めてきた文庫本を、
本棚にしまおうとしたら、
同じ文庫本が並んでいた時の衝撃に似ているナ。
映画のDVDを借りてきて見始めたら、
以前借りて観たヤツだったと、
気付いた時の衝撃にも似てるナ。 ときさば
by ishimaru_ken
| 2012-04-06 06:55
| その他
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