本日は、<でも>の使い方教室~
「蕎麦
でも、食べにいきますか~」
昼食に、係長が声をかけている。
しっかりとご馳走はできないが、
蕎麦屋なら、なんとかなると、ふんでいる。
蕎麦屋に行って、そこにあるメニューの中から、
わざわざ、一番高い<鴨セイロ>をたのむ部下は、
いないだろうと、高をくくっている。
しかも、<蕎麦でも>と敢えてことわっている。
これが、<蕎麦を>と言ったなら、
それなりの蕎麦屋に行かなければならない。
もりそばだけで、
40分は待たされる覚悟をしなければならない。
おあいそもそれなりの覚悟である。
「トンカツ
でも食いに行くか?」
この場合、<食べに>ではなく、
<食いに>と表現される。
ちょっと暴れてみるか的なニュアンスがあふれている。
草食系などと気取ってたらいかんヨ。
男子たるもの、たまにガツンといかんとネ。
オジサンだって、カロリーばかり気にして、
ガツンを忘れたらいかんヨ。
行った限りには、
ヒレじゃなくて、
ロースにチャレンジしなきゃいかんヨ。
ここでも、<でも>が使われている。
「トンカツ食いに行くか!」
では、あまりにもの肉食系に、部下は辟易するのだ。
行きたくなくても、無理しなければならなくなる。
<トンカツでも>によって、その店で、
エビフライなどに逃げる事ができる。
「吉田さ~ん、明日あたり、
ウナギ
でも行ってみますぅ?」
取引先の吉田課長に電話している。
今日ではなく、明日というところがミソだ。
今日突然にウナギでは、
今朝食べた食事とのコンビネーションが混乱する。
ウナギを食すからには、
24時間前からの体勢が必要なのだ。
一年にそうそう何度も、ウナギ屋に足を運ぶ機会もない。
ならば、朝食を抜くくらいの覚悟がいる。
明日ウナギだと、頭に思い浮かべただけで、
夜眠れなくなる吉田課長かもしれない。
ここに登場する<でも>は、謙譲語である。
「ウナギ行ってみますぅ?」では、
あまりにも直接的で、含みがない。
<ウナギでも>と、和らげているのだが、
実際は、ウナギ以外の何物でもない。
本当の気持ちは・・こう言いたいのだ。
「吉田さ~ん、明日!
ウナギ決行しますからネ、覚悟してくださいネ
商談の件もサ!」