<のどぐろ>という魚がいる。
喉黒と呼ばれるくらいだから、当然、喉が黒い
エラの中が墨でも塗ったように黒い。
関東では、アカムツと呼ばれている。
こやつは、滅多な事では、釣れない。
のどぐろを専門に釣らせる釣り船に乗っても、
一日に一匹釣れれば良い方だ。
魚体は、大きくなっても、40センチほど。
しかし、釣り人は熱狂する。
なぜか・・?
あまりにも、旨いからだ。
どのくらい旨いかと言うと・・・
刺身にして、ひとかけ食ったら、
立ち上がって、5歩下がってしまうくらい旨い。
一匹丸ごと塩焼きにして食ったら、
最初の一口で、座布団からおちて、
背泳して壁に激突してしまうほど旨い。
鍋でグツグツ煮えたところを掬って、
ポン酢で食ったら、
突然、携帯電話を取り出し、警察に電話して、
「私がやりました!」
自首してしまうほど、旨い。
その本場の、金沢は近江町市場内にある回転寿司屋で、
のどぐろ寿司をつまんだ。
一皿、450円。
うむ・・・期待は裏切られなかった。
さすがに、イスを蹴立てて、
後ろに倒れるような粗相はしなかったが、
倒れたい衝動には、かられた。
人は、旨いモノを食べた時に、
なにがしか大きな表現をしたくなるものだ。
「ああぁ~~~うまい!」
程度で済ましたくないのだ。
「はああぁぁ~~」
溜息だって、30秒くらいついていたいのだ。
出来る事なら、ジャッキーチェンにお願いして、
チェーンアクションよろしく、
後ろの壁まで、ぶっとんでみたいのだ。
それほど、旨かったのだと・・
漫画のように、自分の背後に虹のような形に、
ガアアアアァ~~~~ン!!!
の文字を出して貰いたい。
のどぐろを食べた犬は、
3回廻ってワンと言らしい。
のどぐろの塩焼き