「ヤッタ~!」
剣岳山頂は、見事に晴れていた。
立山や、後ろ立山連峰が見渡せる。
遠くに、槍、穂高岳も望める。
あれは、富士山じゃないか!
よおし、お弁当だ!
山小屋で作って貰った弁当を広げる。
山頂の飯ほど旨いものはない。
何を食っても旨いのに、
しっかりとした弁当は極上のご馳走である。
ただのウインナーが、松坂牛ステーキに感じる。
ただの卵焼きが、築地の寿司ネタに思える。
ただのタクアンが・・・ま、いっか。
勿論、容器に入っていたご飯もオカズも皆たいらげる。
ご飯一粒とて残さない。
誰も見ていなかったら、たぶん容器は、ナメられている。
「イシマルさん、又会いましたネ」
青年が声をかけてくる。
よく見ると、1年半前の冬、
神奈川の
塔ノ岳の登山中に出会った彼だ。
「よく会いますね」
『うん、たぶん、又どこかで会うだろネ』
「次、どこ登るんですか?」
『さあ、わかんない。君は?』
「わかんないですねぇ、ははは」
<カニの横ばい>
さあてと、岩山は登るより、降りる方が難しい。
危険度は倍になる。
なぜか?
人間の身体が、降りるように造られていないからだ。
眼がテッペンの頭に付いているので、
足が、どこを踏んで降りればいいのか、
見つけにくい。
ヒザ辺りに眼が付いていれば、
どんなに楽に降りられるだろう。
神様は、次には考慮に入れて欲しいものだ。
ロボット設計者にも、お願いしときたいもんだ。
「着いたア~!」
再び、剣山荘に辿り着き、
早速、シャワーを浴びる。
ヒエ~~~
又、雪解け冷水シャワーを隣の人に浴びせて、
悲鳴を挙げさせている。
ふむ、まだ、余力が残っておるな。
このまま、帰路に着く予定だったのだが、
明日、立山も縦走してみようかな?
ふむ、今夜のビールの量次第だな・・