<ワラサフィーバー>
<ワラサ爆釣>
耳には聞いていた。
目でも釣り新聞で見ていた。
ほんとに、そんな夢のような事があるのかと、
半信半疑ながら、三浦半島の松輪漁港に向かった。
爆釣(ばくちょう)!
これまで、そんな甘い言葉に何度騙されて、
ボウズ(0匹)で肩を落として家路についたことか・・
「今日は、釣れるよ」
午前5時、船長が目の覚めるような言葉を吐いてくれる。
しかし、その言葉に、何度騙されたことか・・
そして、5時間後・・
私は、船に揺られながら、口笛を吹いていた。
口笛なんて、久しぶりだ。
なぜか、
「♪~丘をこ~え行こうヨ~口笛ぇ吹きつ~つ~♪」
海の歌ではなかった。
私は、晴れやかなのだ。
爆釣ってやつをやっちまったのだ。
ワラサといえば、ブリの青年である。
体長60センチ、体重3キロほどもある。
ちょいと気取った飲み屋に行くと、
5切れほどのワラサの刺身で、980円と壁に貼ってある。
<三浦半島剣崎沖ワラサ>と銘うてば、
1200円と黒板に書いてある。
さらに、<今朝捕れ>の接頭詞が付けば、
1500円と竹の皮に墨でシタタメる事も出来る。
そんなワラサ・・刺身にして、20人分は軽くとれるワラサを、
カツオの一本釣りのように、釣り上げたのだ。
釣り道具屋に売っていた一番大きなクーラーが、
パンパンになった。
一人でとても運べない重さになった。
「いや~長いこと釣りをやっているけど・・」
船を降りる時のセリフが、みんな同じだった。
同乗した釣り人全員が、同じ目にあった。
「いや~長い事・・」
んで、明治の画豪<青木繁>の《海の幸》を真似ようと、
必死で背負ってみたのだが・・・