「お帰りなさい」
そこは、与論島だった。
私が、毎年訪ねる楽しい島である。
島に着いたその夕方・・
買い物にスーパーに向かった。
その入口あたりで、突然目の前に、3つの影が現れた。
妙麗な女性が、四つ五つの二人の子供を従えている。
子供を私の方に押し出しながら、出た言葉がコレだ。
「
お帰りなさい、覚えておられませんか?
ホラ、あんた達、ごあいさつなさい」
ここまで、読んだアナタは、今、何を思いました?
『はは~ん、やっぱイシマルは悪い奴だ』
『責任とれ~!』
私は、悪い奴ではない。
間違っても、身に覚えがない。
間違わなくても、間違った事をしていない。
私は、アナタが思っているような人間ではない。
その全く悪くない人である私の腰が抜けそうになった。
与論島では、外から来た旅人に、
「いらっしゃい」ではなく、「おかえりなさい」と言う。
親愛の心を、その言葉で表しているのだ。
そして、その女性は、子供を押しだしながら続けて・・
「昨年は、写真を撮って頂いてありがとうございました。
ホラあんた達、覚えてるでしょ」
『覚えてな~い』
以前、子供達と記念写真を撮ったらしいのだ。
そのお礼を口にしただけなのだ。
でもね、文章に気をつけましょうネ。
だって、さっきの言葉を突然かけられたら、
世の男達は、身に覚えがなくとも、
ドキッっと心臓が脈打つように神様が拵えてあるのです。
気の弱い人だと、ぶっ倒れる可能性もあるのです。
よもや、身に覚えがある人なんかだと、
泣きだしてしまうと聞いた事があります。
どうか、
文章には、気をつけましょうネ。
医者だって、患者の前では、文章や言葉に気を付けている。
「あっ!」
なんて、感嘆詞は間違って言いません。
「やっぱり」
も、禁句です。よもや・・
「ご家族の方、よんで頂けますか」
とは、血迷っても口にしないものだ。
「おかえりな・・・」
まるで、ドラマのワンシーンを見ているかのような、
一瞬の出来事であった。
どうして私には、こんな事ばかり降りかかってくるのだろう?