《バタヤンの休暇》
まずは、恒例の写真を見ていただこう。
これらのシャッターチャンスは、随分間隔が開いている。
では、バタヤンの金太郎飴写真だ。
周りの人たちが、どう変わろうと、姿勢が一定している。
又もや、恒例となったバタヤンの休暇である。
バタヤンとは、デザイナー業を営むウインドサーファーである。
私は、バタヤンと年に一回しか会っていない。
その一回の邂逅に、バタヤンは、毎年変わらぬ姿を見せてくれる。
今年の、恒例の餅ツキでも、デザイナーらしい形を見せてくれた。
今年のバタヤンは、海を見つめながら、
恒例のお神酒を呑み、
恒例のあんこ餅を喰らっていた。
あんこキナコ餅をニチョニチョ喰らいながら、
日本酒をゴクゴク呑むという、
辛党としては考えられない芸当を正月から見せ付けるのである。
そのバタヤンの動きがフト止まった。
視線が落ちた。
なにか、閃いたのか?
去年、一昨年と、
世界のデザイナー賞グランプリをいくつもとったデザイナーの、
ハートに、何か閃いたに違いない。
鋭いマナザシは、ゴルゴサーティーンとも言える。
数十秒が過ぎた。
やおら・・目線があがった。
スックと立ち上がったバタヤンが向かった先には、
お神酒の樽と、お餅があった。
なんのことはない。
ゴルゴサーティーン数十秒の、
<バタヤンの心の中>を私が解説しよう。
(う~んと、お神酒を3バイ目ぇ、どないしようかなぁ~?
呑んどくかなあ~?
そや、お餅も、三回目のオカワリやなあ~?
9個も喰うてもうたら、ヒンシュクかなァ~?
お餅9個喰うたら、笑われるかなあ~?
せやけど、イシマルさんも、8個食べてはったしぃ~
よし、やっぱ食っとこ)
今年のバタヤンは、何か思うところがあったのか、
初めて餅つきの杵を握った。
ただし子供用の杵で、ツキ音も、ペッタンではなく、
ピタンピタンと軽かった。
その回に、ついた餅に、私は手を出さなかった。