又々、木を切る。
背丈の高い木を切り倒すのは、大変である。
単に地面に近い所から、切ったりしたら、倒れる際、
その周りにある木に引っ掛かってしまう。
一度引っ掛かった木は、危なくて近寄れない。
倒産しかかった会社に近寄れないのに、似ている。
引っ掛かる原因は、<枝>である。
特に太い枝は、倒れる邪魔をする。
邪魔どころか、枝先を下に向けて落下すると、
地面からの反発で、倒れた木が跳ね上がることがある。
跳ね上がれば、その木は、
切った人間に向かってキバを剥く!
危ない!
そこで、あらかじめ、
枝を数本切り落とさなければならない。
で、私が木に登る。
ハシゴやクライミング技術を駆使して、
高い木によじ登ってゆく。
枝を伝って、先の方に、ロープを結びつけたりする。
トビの仕事である。
太い枝は、エンジンノコギリ、通称
チェーンソーを使用する。
不安定な樹上での、チェーンソーは、
スリルのレベルを超えている。
ギャイイィィィ~~ン!
エンジンを指導させた途端、
私は、13日の金曜日、
樹の上のジェイソンになる。
できるなら、ヘルメットを狂気の仮面に取り替えたい。
腰に吊るしてあるノコギリが、ジェイソンを演出している。
「切り離しますヨォ~!」
ジェイソンらしからぬ、生真面目な声が響く。
メキメキメキッ!
10mを超える枝が、切り落とされる。
真下に落下するかと思いきや、
なんと枝は、クルリと方向を変え、
あにはからんやの方向へと飛んでゆく。
あにはからんやとは、意外なという意味である。
だから、木を切るのは難しい。
「逃げろ!」
ジェイソンが叫ぶ。
ジェイソンのセリフとしては、正反対だ。
「あぶない!」
これも、ジェイソンがすべきでない発言だ。
ジェイソンに成りきれない樹上のチェーンソー男は、
木を切るのが、ことのほか、大好きになったのである。