「マグロ大トロ好きですかア~」
アントニオ猪木のノリで叫んでみた。
大トロとは、マグロの腹身だ。
その腹身の、さらに最も腹の部分が、
その魚屋の隅っこに転がっていた。
そのとは、与論島のさる魚屋だ。
オバアがひとりで経営しているちっちゃな魚屋さん。
今朝あがった15キロのキハダマグロの腹の部分を、
10×20センチほど、切り取り、ほおってある。
無造作に、ほおってある。
尻尾やら中骨と同じ場所にほうおってある。
まさか・・捨てる?
「これ売ってもらえます?」
『あいよ』
気前よく、新聞紙に包んでくれた。
安かった。
持って帰る。
さあ、どうしよう?・・持って帰ったものの・・
表面には硬い皮が付いている。
裏側にも薄皮が付いている。
包丁で剥がすのは、難しい。
そうだ!
焼こう!
タタキにしてみよう!
携帯ガスバーナーを取り出し、着火する。
ボオオオォォォ~
青い炎が腹身の表面をあぶってゆく。
でけた!
見た目は、ステーキだ。
だから、ステーキ状にカットした。
正座して待つ仲間の前に、披露した。
したとたん・・
久々に、皿の上をハシが乱舞するさまを見た。
猫のようなミャアミャア声を出しながら、
彼らは腹身のタタキをたいらげた。
そして、つぶやくのだった。
「生きてて良かったぁ~」
by ishimaru_ken
| 2013-02-04 05:46
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