問題は、スリッパである。
旅館やホテルに常備されているスリッパだ。
さほどお値段の高くない仕様の、
消毒済みと明記されていたり・・
ビニール袋に包まれていたり・・
そのスリッパを履いて、部屋を出る。
ペタペタペタ・・
向かう先は・・
<大露天風呂>
温泉宿に泊まると、まっさきに露天風呂に向かう。
なにげに、距離を歩かされる。
途中にエレベーターや坂道があったりする。
わざわざ辿り着く的な遠足が、温泉気分を盛り上げる。
<男湯><女湯>
ノレンが下がっている。
それをくぐると、上がりガマチがある。
いくばくかのスリッパが脱ぎ棄てられている。
きちんと揃えてあるのもあれば、
いい加減に脱いでいるものもある。
ふと、見上げると、一応下駄箱があり、
そこに収めても構わないようだ。
(まあ、スリッパだから、このまま置いておこう)
このままと言いながら、端っこに、きちんと揃えて置く。
(私のスリッパ!)
目の隅で確認する。
・・なんやかや・・
風呂を大いに満喫して、帰り際だ。
ん・・?
私のスリッパが無い!
入る前に、端っこにきちんと並べて置いたスリッパが、無い。
誰かが、履いていったんだあ!
ううぅぅ~~~
私有権を所持している私のスリッパを、
いいかげんな気持ちで、誰かが、履いていった。
いったいどうしてくれるんだ?
腕組みをしながら、考える。
ふむ?
考えてみると、旅館のスリッパは、シャッフルだよな。
シャッフルとは、
トランプのかき混ぜという意味だ。
<私の>とか<アナタの>とか、意味をなさないシャッフルだ。
今日の私のスリッパは、
明日の誰かのスリッパになるんだな。
それは解っているつもりなのに、
我が部屋から履いていったスリッパを、
《わがスリッパ》と決めつけるのはなぜだろう?
帰りに無くなって、残念に思うのは何故だろう?
足の裏の潔癖感だろうか?
部屋にあったスリッパを新鮮なモノと、勘違いさせてくれる、
宿側の親切な思惑だろうか?
(しょうがない、コレでも履いて帰るか)
残されているスリッパに足を通す。
なるほど、こうやってスリッパのパスが行なわれている!
で、気付く。
帰りに、スリッパを奪う私には、
スリッパの所有権的な愛着は全くない。
よもや、
足の裏の潔癖感もない。
行きと帰りで、私の足の裏は、別人格になっている。
スノーシューはスリッパか?