「石丸様の乗船いただく高速船が、故障してしまいまして」
大島から帰る
船が壊れたと、わざわざ船会社から電話がかかる。
『はあ、で、どうすれば?』
「時間はかかりますが、大きな船でよろしければ」
『かまわないです』
「お部屋は
一等と
二等がございますが」
『い・・一等で』
そら、迷わず一等にするわな。
新幹線で、普通車とグリーン車どっちにする?
とわざわざ尋ねられれば、そら、グリーンにするわな。
船に乗り込むや、すぐに、部屋に向かった。
<一等、101号>
チケットに書いてある部屋を覗くと、8人分の布団が敷いてある。
8人が、共同で休息するのだと理解する。
ふ~ん、どうも気前が良すぎると思ったんだナ。
ま、いっか、都合よく他に誰もいないしぃ・・
ん・・もしや?
部屋をとびだし、廊下を進む。
そこに、やはりその表示はあった。
《特等》 《特一等》
客船というのは、部屋のランクがたくさんある。
《特等》
《特一等》
《一等》
《特二等》
《二等》
私が、グリーン車だと勘違いしたのは、
ちょうど真ん中のクラスだ。
船会社も、あえて、勘違いするような会話をしていた。
言わなければ、
一等のさらに上のクラスが存在するとは、
誰も思うまい。
つまり、船がトラブッた程度では、
特等にも、特一等にも、お入り願えないというワケだ。
「ちょぃと覗いてみるっぺ?」
不埒な輩を排除するためか、
見張り員がいて、特等の廊下にすら入れない。
そういえば、昔は
三等もあったと記憶している。
乗船して階段を幾階か下りた、船の最深部の大部屋に、
ゴチャゴチャに詰め込まれ、
寝場所取りに苦心していた。
「船沈んだら、わたしらお仕舞やなあ~」
嘆くオバチャンの横で、
日本酒片手に、アグラを組んだオッチャンが、
「転覆してひっくり返ったら、俺らがテッペンやぞ!」
映画ポセイドンアドベンチャーみたいな事をうそぶいている。
テッペンには違いないが、どうやって脱出するのかまでは、
オッチャンも考えていない。
三等に乗り合わせた乗客の、遠吠えなのだ。
船に弱い方のために、酔わずに寝る方法を教えよう。
《
進行方向に頭を向ける》
船首を12時、船尾を6時とすると、
自分の頭を12時に向けて寝転ぶ。
荒波を船が越える時、船首のほうが持ち上がる為である。
3時や9時に頭を向けると、
横揺れのたびに、頭に血がのぼる。
《
船の真ん中に寝る》
端っこに寝ると、横揺れする船では、上下動が大きい。
ど真ん中が一番
横揺れが小さい。
船の前後では、やや後方が揺れにくい。
結論;
部屋を限定される特等や一等ではなく、
すいていれば、二等の真ん中あたりを狙うべし。
一等を いっとうエライとかんちがい