<つぬけ>
「おう、
つぬけたな!」
その仕事を頑張っていると、先輩が、褒めてくれる。
それまで、どうしようもなかったアナタを、
ついに、
つぬけたと認めてくれたのだ。
「このやろう、
つぬけやがって!」
認めながらも、自分の領域に入ってきた後輩に、
敵対心も忘れない。
ふむ、ところで、<つぬけ>ってなんだろう?
つぬけは、釣りの現場でよく耳にする。
「いやっほ~
つぬけたゼ!」
釣り人が、嬌声をあげている。
彼は、釣りあげた魚が10匹を超えたと喜んでいるのだ。
10匹以上吊り上げると、<つぬけ>と呼ばれる。
なぜか?
「ひと
つ、ふた
つ、みっ
つ、よっ
つ、い
つつ、むっ
つ、
なな
つ、やっ
つ、ここの
つ」
日本語の一桁の数字には、ごらんの通り、
<つ>が付く。
ところが、10を超えると、<つ>がなくなる。
「ここの
つ、とお・・おぅ、
つがぬけたじゃねえか」
つが抜ける=<
つぬけ>
そこで先人は、お洒落に、<つぬけ>なる言葉を生み出した。
鯵を10匹釣りあげたところで、
「おう、
つぬけたネ!」
同行する釣り人から、賛辞がふってくるのだ。
ん・・?
ほんとに、10以上に《つ》がないのだろうか?
イシマル研究所が、突然、疑問を抱いた。
百と千を調べてみた。
ふむ・・ないナ。
そこで、万も億も兆も・・・京まで調べてみた。
うむ・・ない!
ん・・ほんとにないのだろうか?
本日のイシマル研究所は、しつこかった。
京のずっと先まで調べた。
万から京までが、10の12乗だとすると、
遥かかなたの10の300億6477万1072乗目に、
それはあった。
<伺察(しさつ>
その桁の1は、<しさ
ついち>である。
「つ があんじゃねえの?」
漁師のおっちゃんに、指摘されたら、言い訳ができない。
「しさ
ついちです」
思わず応えてしまう。
鯵を<伺察一(しさついち)>釣るなどありえないのだが、
理論的には、つ、はある。
しかも、この遥かに先、
10の1202億5908万4288乗目に、
<高出(こうしゅ
つ)>もあるでヨ。
伊豆大島の砂漠地帯