都会の雑踏には、危険が満ちている。
私は、同じ怖い思いを、2度体験している。
場所は、大きな駅のコンコースだった。
もの凄い数の人が、でたらめに歩いている。
その中に、今日の主人公の、オバチャンがいる。
オバチャンは、後ろから付いてくる友達のオバチャンに、
呼びかけている。
「ホンダの奥さん、そっちじゃなくて、こっちヨ!」
こっちヨ!と言い放つや、
こっちを全く見る事なく、人差し指で、こっちを指差す。
もいっかい言う。
全く見ることなく!
ここは、広いグランドではない。
《誰にも触れずに歩けるか?》競技会をひらいたら、
優勝者が一人もでない大会になるであろう駅のコンコースだ。
当然、オバチャンの前にも人はいる。
前とは、オバチャンの本来の前であり、
今は、ホンダの奥さんに振り返っているので、
後ろと云うことになる。
その後ろには、運の悪いことに、私が歩いていた。
危険回避能力に長けている私の運動神経が、敏感に反応する。
オバチャンの肩の動きを、0,5秒前に察知した。
(くる!)
はからずも、人差し指がとんできた!
オバチャンの腕は、水平ではなく、やや、上に向いている。
これから行きたい場所が、ビルの上階なのだろうか?
上・・それは私の顔の方角だ。
バシッ!
眼球の10センチ手前で払いのける。
っと、そのとたん・・
「ギャッ、なにすんの!」
(いや・・)
「ちょっとホンダの奥さん、この人、私の手、叩いたわヨ!」
(
ハタいたけど、
タタいてませんが・・)
私の心の声が、口に出る間もなく、
「なにすんの、あんた!どいて!」
オバチャンは、去っていった。
2度目の遭遇も、ハンで押したように、そっくりだった。
ガシっ!
今度は、ハタけず、掴んでしまった。
「ギャッ、なにすんの!」
(いや・・)
「コバヤシの奥さん、この人、私の手、握ってるわヨ!」
(
握ってませんよ、
掴んだけど・・)
又しても、言葉に発する前に、
「ct yあんhSOu×sg●dgf!!」
あくたいをついて去ってしまった。
どちらのオバチャンにも、
人の目を突きそうになった自覚がないらしい。
ここは、ひとつ反省を促さなくては!
《指で突くと、反省する行為》
そんなものあったかな?
中指を額にあてて考えた。
あった!
子供の頃、コレをやって叱られたものだった。
《障子を指で破る》
障子に、指を突き立てて、穴をあけ、
母親に、こっぴどく叱られた。
「けんじろう!、張り替えたばっかりなのにぃ!」
よし、障子をオバチャンの前に掲げよう。
大きなものは持ち歩けないから、
30センチ四角のミニ障子を首からぶらさげておこう。
「ねえねえ、オオウチの奥さん、コッチヨ!」
(くる!)
その瞬間、さっと、ミニ障子を掲げる。
ズボッ!
「キャッ!なにコレ!」
オバチャンは、
障子を破る行為には、いたく傷つくのである。
「ごめんね、張り替えますワ」
・・とはならないだろうなぁ~