悲しいことだが、熱い風呂に入れるようになってしまった。
熱い風呂とは、42度ほどのお湯のことだ。
私的には、これが悲しい。
なにが悲しいって、その熱い湯に、首まで浸かって、
「ああ~~」とか言ってる私が悲しい。
ジャポンッとか、お湯を揺らがしてる私がふがいない。
異常なまでの、新陳代謝をもつ私が、
《湯舟に漬かる=大汗をかく》
という<人間としてどうかな>的な、
時間を長い間過ごしてきた事は、以前にも述べた。
しかし、それはそれで気にいっていたのである。
その私が、ここんとこ、
「ああ~~」とか感嘆詞をほざいている。
42度の熱湯の中でである。
しかし、この「ああ~~」にも条件がある。
同施設内に、
《冷水コーナーが存在する時に限り》
なのだ。
熱い風呂と冷水に入る、を何度も繰り返すのである。
サウナが有る風呂屋には、冷水が設置されている。
私は、サウナには興味がないのだが、
冷水には、興味森々で、冷水施設のない風呂屋を、
ランキング下位に落としてしまうクセがある。
《冷水のある風呂屋》=《良い風呂屋》
非常に解り易い図式だ。
《冷水のない風呂屋》=《しまった出直そう》
以前までは、この冷水はサウナから出て来た人達が、
ザンブと漬かる身体冷ましとして用いられていた。
ところが!
近頃では、
熱い湯と冷水を行き来する私の様な利用者が増えて来た。
どのくらい増えて来たかというと・・
ところで、冷水の入れてあるコーナーってのは、
さほど広くない。
頑張っても、二人入れば、もう一杯だ。
3人目が入ろうとすると、
水中身体接触という気持ちの悪い状況が発生し、
口論から、あわや乱闘騒ぎに発展する可能性すらある。
(ないな)
そんな小さなコーナーでも、これまでは、なんとかやっていけた。
冷水に漬かっている時間なんて、
10秒~長くても30秒ほどだったのである。
それが、ここんとこ、長く漬かる人が増えたのだ。
1分なんてざらである。
3分漬かったまま、出て来ない人もいる。
5分過ぎて、唇が青くなり、
ガタガタ震えながら挙がってくる私なんかがいる。
理由はなんだろうか?
一つは、冷水温の上昇である。
行きつけのスパでは、温度計が18℃をさしていた。
これでは、冷水とは言えない。
プールに近い。
冷水の通常温度は、12~15℃じゃなかったのか?
ここは、一つ江戸っ子の爺様にご登場願うしかない。
「なんでぇなんでぇ!ちかごろじゃぁ、
湯舟が生ぬるくなりやがって、
へぇったって、ちっとも熱ったまらねぇじゃねぇかい!
おまけに、こっちの冷水もどうなってんでぃ!
このヌルリとした冷水はなんでぇ!
横町の純喫茶カトレアだって、もっとましな冷水出すぜぃ。
本来はよぉ、へぇった途端、キーンと玉が縮みあがってナっ、
ひょっとしたら、心臓マヒ起こすんじゃねぇかって、
ビクビクしながら、へえるもんだろうヨ。
それがなんでぇ、これじゃスイカも冷やせねぇじゃねぇかぃ!
氷かついで、おととい来やがれ!」
な~るほど、江戸っ子の銭湯があまりにも熱過ぎて、
身体によろしくないってんで、最近銭湯がぬるくなった。
・・と、同じ現象が、冷水にも生じているのかもしれない。
キンキンの冷水は、身体によろしくないのだろうか?
「おいおいおめえヨ、さっきから熱いの行ったり冷てぇの来たり、
せわしくって、いけねぇやぃ。ひょっとすっと、
おめえの体温で、ヌルくなっちまったんじゃねぇのけ?」