<断食 5日目> 108時間経過
体重(スタート時から)4,2キロ減
街を歩いている。
なんとまあ、世の中には、食い物が溢れていることか!
街を歩けば、食べ物屋さんだらけである。
外食産業が、ここまで盛んだったと、改めて気付いた。
あの看板も、この看板も、食べ物を強調している。
ショーウインドーに、ホンモノが飾られてある。
「腹を満たせ!」と街中が叫んでいる。
うむ、今日こそ、食べ物の事を書くまいと誓っていたのに、
人間が出来ていない私の脳みそは、
まだ、食い物にしがみついている。
3日経ったら平気になると、豪語していたのは誰だったんだ!
言い方を変えると、
108時間、食べものの事だけ考え続けられる
<
食事願望気力>も大したものじゃいか、と感心している。
大学受験の頃、これほどの気力を勉強で持続できたら、
とっくに、東大に合格して親を喜ばせていたものを・・
嘆かずにはいられない。
(ウソです)
もうそろそろ、山上におわします仙人の如く、
スーッと、澄み切った精神を獲得してもいい頃なのだが・・
ここで
臭覚の話をしよう。
食べ物が、テレビや、街に溢れているが、
視覚的には、どおって事なくなってしまった。
見慣れたと言っていい。
脳が、締め切ってくれているようだ。
ところが、匂いの方は、そうはいかない。
エキセントリックに襲ってくる。
恐らく臭覚は、数倍の知覚を人間としてとり戻している。
たとえば・・
夕方、町内を歩いていると、夕餉の仕度だろうか、
換気扇から、匂いが漏れてくる。
焼き魚だと分る。
その魚の種類まで分る。
「ああ、サンマだな、イワシだな、サバだな」
この区別はつく。
さらに、
「このサバはみりん干しだな、しかもゴマを振ってあるナ」
ここまで分る。
さらには・・
「このお宅の奥様は、魚焼き器を昨日洗ってないナ。
その金網で、豚肉を焼いた形跡があるゾ」
これすら判明できる。
なおかつ、
「この魚焼き器は、旧式で煙がこもるタイプだナ。
サバがやや燻製になっているじゃないか!」
こ~んな事まで分ってしまう。
断食修験者が、奥様の台所の横を通り過ぎただけで、
その暮らしが、赤裸々に暴かれるのだ。
時折、外を覗いてみたほうがいい。
青白い顔をして、目だけギラギラしたおっさんが、
鼻をひくつかせながら、
フラフラとうろついていたら、
それは、断食修験者だ。
滝田くんが、「断食のお見舞い」と、
日本酒を一升瓶で届けてくれた。きっといい人なのだろう。