断食明けにアルコールを摂取するとどうなる?
たいした量ではなかった。
酔っ払うほどではなかった。
しかし、肝臓は、すっかりやる気を失くしていた。
まっさらに出直した新入生の肝臓くんは、
久々のアルコールに目を回した。
昨日の夜中の事だ。
「トイレに行こう」
寝ぼけ眼で考えた。
むくっと起き上がり、すっくと立つ。
布団から、
一歩左足を踏み出した。
その瞬間、床が無くなった。
ワァッ!
我が家の寝室は、ベッドである。
しかし、普段からあっちこっちで寝るクセのある私だ。
リビングや別室や、あるいは廊下で寝る習慣のある私だ。
断食中、床に直接、布団を敷いて寝ていた。
その記憶が、昨日もあったらしい。
ところが昨日は、久々にベッドで寝ていた。
それをすっかり忘れていた。
左足が宙を踏んだ。
ワァッ!
このまま落ちると、身体の前面から床に激突してしまう。
顔面危うし!
寝ぼけた状態の頭脳が、
0点数秒の一瞬で、起動する。
だが、頭脳が起動し、筋肉に命令を発する時間的余裕はない。
するとだ・・筋肉が独自の反応をするではないか。
出した左足の反対、つまり右足が、
力を抜いたのである。
っとどうなる。
40cmの段差を前傾姿勢で倒れ掛かった身体が、
ストンと、真下に落ちた。
からだは崩れ落ちるように、床に達し、
お尻から、倒れこんだのである。
立っていた人間が、真下に崩れ落ちる姿に似ている。
結果、まったく怪我せず、
無事にベッドから落ちた。
まだまだ私の危険回避能力は、健在であるらしい。
その昔、劇作家つかこうへい氏に、名指しで呼ばわれた。
「イシマルは脳ミソまで筋肉で出来ている」
今なら、胸を張って応えられる。
「イエッサア~!」