友人と、酒を呑んでいる。
話が盛り上がる。
興奮してくる・・
するとだ・・
突然、立って喋りだすのだ。
なぜだろうか?
床にベタっと座布団一枚で座って、一献傾けている。
「おお~そうそう、オレもそうだった!」
同意するあまり、つい立ち上がってしまう。
立ち上がったあげく、皆を見下ろしながら、
こんこんと、説明話を繰り出す。
なぜ、立ち上がるのだろう?
興奮しているのは、わかる。
言いたい事が溜まっていたのも、わかる。
でもなぜ、立ち上がるのだろう?
こういう説もある。
人に聞いて貰いたい話を、最大限表現するには、
大きな声を出すか、高い場所に位置すればよい。
ってえこって、私は、高い場所に位置するべく、
立ち上がっているらしい。
すると、負けじと立ち上がる輩が現れる。
さっきから、座って呑んでいた奴が、
腕を振り回しながら立ち上がり、
論戦に参加するのだ。
「そうそう、そういう言い方もあるんだが!」
これが、自宅で呑んでいるのなら許せる。
問題は、飲み屋だ。
一人が立ち上がると、次々に立ち上がり、
やがては、全員が立ち上がって、グラスを傾けている。
まるで、西部劇のバーのカウンターである。
赤い顔をした興奮した野郎どもが、ツバを飛ばしながら、
喧々して諤々している。
そこで、誰かが、ハスキーな囁き声で、つぶやく。
「とりあえず、さぁ~・・座んない?」
ハッと気づいた我らは、従順に股を割って座り込む。
しかして、数分・・
やには、私が立ち上がる!
待ちきれんばかりに、誰かが立ち上がる。
待ってましたとばかり、皆が立ち上がる。
そして・・
「ねえねえ、みんなさぁ~座んない?」
なぜ、お酒を呑んで盛り上がると、立ち上がるのだろう?