<カウンターバランス>
クライミングにおける技の名前だ。
岸壁を登攀中に、伸ばした腕と反対の足の動きを、
そう呼んだりする。
人は、無意識で左右のバランスをとっている。
たとえば・・実験をやってみよう。
一本の線を床にひく。
その前方、70~80センチの所、
(手が届くか届かないかの距離)にカップを置く。
さあ、
両足を線からはみ出ないようにして、
右手で、カップをとってみよう!
アナタのカラダは、次第に右足に体重がのってくるハズだ。
さらにカラダは横向きになり、やがて、
左足が、身体から後方に離れてゆく。
右手と左手が、ヤジロベエの関係になっている。
このバランスをアナタは無意識にやっている。
それを、意識して技として行うのが、
カウンターバランスである。
っと、これは、クライミングの話。
さっき、「ふえええぇ~」
大きなため息をついた。
昨夜徹夜でのロケだったので、
さすがに、ヘソが曲がって吐息が出た。
この吐息は、思うに、
感情のカウンターバランスである。
吐息を吐くことによって、内部にうっ積しかかっている悪感情と、
バランスをとろうとしている。
時折、会社の廊下で、
「はあ~ああ」
思わずため息をついてしまうオジサンがいる。
溜まり溜まったオリを、ため息の吐き出しをする事で、
バランスをとっている。
吐き出さなければ、
反対側に心がこけてしまうのだ。
しかし、このオジサンは、無意識に吐息が出てしまっている。
そこで、クライミングの技だ。
意識して・・
技として、ため息を吐いたらどうだろう。
誰もいない場所で、
はっきりと大きくため息を吐く。
まるで、大舞台で千両役者がやるように、派手なため息をつく。
これは技であるので、ため息をついた事実に悲観する必要はない。
なるべくど派手なため息であるほど、
おおきなカウンターバランスになる。
(さっき、カップに手を伸ばした要領だネ)
左足の伸ばしが、ため息に当たるんだネ。
では、カップをもう10センチ離してみよう。
こいつを取るにはどうしたらいい?
アナタにはお解りだネ。
左足に錘をつければいい。
すなわち、ため息の後に、もう一言錘を付けてみよう。
「はぁ~ああ、
そうかぁ~~」
芝居っけたっぷりに、「そうかぁ~~」を吐き出そう。
何がそうかぁ~なのかの意味は考えなくていい。
技としての、カウンターバランスなので、
気にしない、気にしない。