「鹿は馬鹿ですよ」
昨年、鹿にオートバイで激突した義弟が、
のたまっていた。
あんなに運動神経の良い動物なのに、
なぜ、交通事故を起こすのだろう?
常々疑問であった。
先日のことだ。
長野県に山を登りにいった帰りの列車内に私はいた。
「ただいま、当列車の前の列車が、鹿と衝突いたしました」
なんですと?
鹿をはねたらしい。
アナウンスによると、はねたものの、その列車は通り過ぎた。
あとは、後続列車に任せるからよろしく的な解決法みたいだ。
やがて、当列車は停止した。
「ただいま、当運転士と車掌が、鹿の撤去作業にあたっています」
列車の運転手とは、鹿の死体を処理する作業まで任されている。
おそらく轢いてから10分と経っていない。
プロ意識が高くなければ、できない作業である。
「ただいま、鹿の撤去作業が終わり、まもなく発車いたします」
山間部から列車は静かに走り出した。
鹿が、車や列車にはねられる事故は、多い。
北欧では、ヘラジカとの車衝突事故が、起こる。
ヘラジカとは、馬ほどの大きさがあり、
角の大きさは2mを超える。
そんな物体との衝突は、車の方が負けてしまう。
大事故となり、命にかかわる。
北欧では、ヘラジカ注意の看板が至る所に、掲げられている。
ヘラジカも鹿だ。
どうして鹿は、はねられるのだろう?
熊や猿がはねられた・・とは聞かない。
猪は時たま聞くが、鹿の比ではない。
アノ目からして、視力が悪いとは思えない。
あの足の速さからして、逃げ足を疑えない。
あの草食動物的怯え方からして、
注意力が足りないとも考えられない。
では、なぜ?
義弟が、断定する。
「馬鹿なんですよ」
オートバイを大破された恨みがまだあるらしい。
馬と鹿を、漢字の馬鹿に使用した、いにしえの人たちは、
鹿の
鹿となりに気づいていたのかもしれない。
あの可愛らしい顔つきに騙されずに・・・
そういえば、撤去された鹿は、その後どうなったのだろう?
その後の、<
肉のゆくえ>が気になるんですが・・